サバイブする転職思考法 「準備編」

タラコ

これまでの経験や人間関係を大きく変える転職は、人生の一大イベントです。一度きりの人生なので、思い切って新しい環境に飛び込んでみるのもいいですね。準備編では、自分の決断が正しいのか、今転職すべきかについて紹介します!

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目次

なぜ転職したいのか?

なぜ転職したいのか

ひと昔前は、新卒で入社した会社で定年までお世話になることが一般的でしたが、今や転職は当たり前の世の中になりました。私も日系平社員から外資の経営職まで経験していますが、次のステップに挑戦する人に必ず聞くことは「なぜ転職したいのか?」です。

働いている期間が短い場合に「カルチャー」のアンマッチを聞くこともありましたが、やはり多くの理由は、「成長」、「年収」、「ワークライフバランス」の三点です。

大前提として「自分の努力や工夫では変えられない」ことに不満を感じているなら、積極的に転職を検討すべきです。例としては、やはり「カルチャー」と「年収」が理由の場合ということになります。

カルチャー

会社の雰囲気や社風が合わない。評価や昇進に透明性がない。意見を聞かない。ハラスメントの見過ごし等は「カルチャー」のアンマッチで、自身の努力では何ともなりません

長く働いている上司や同僚も「最初は変だ」と感じながらも徐々に環境に適応し、いつの間にか「会社や組織の文化」として思考が更新されてしまうので、あなたを取り巻く環境は恐らく変わりません。

会社の雰囲気や働く人の考え方、仕事の進め方に違和感がある。もしくは、合わないと感じた場合は、早々に転職準備を始めるか、順応できる日まで頑張れるのかを選択しましょう。

年収

労働時間と年収が合っていない。頑張っても給料が上がらない等の不満はどうでしょうか。

効率的な働き方を目指すことや、目標に対して大きな成果をあげるなど、自身の努力や工夫によって年収を上げられると信じている人も多いのではないでしょうか。

もちろん、自身の努力が年収アップにつながることもありますが、「年収」を理由に転職を考えている人には、恐らく当てはまりません

効率的な働き方

先ず、効率的な働き方についてですが、タイムマネジメントを徹底したり、やること・やらないことをどれだけ整理しても、限りある労働時間の中で、倍の成果が出ることはありません

せいぜい10%から20%程度空き時間を生み出せる程度で、最終的には、自分が苦労して生み出した時間も新しい仕事で埋まってしまいます

どこの会社も同じで、手が空いた人に新しい仕事が振られます。効率的な人は仕事が早いと重宝され、より難しい課題や、多くの仕事が回ってくるのです。

つまり、効率化を進めれば進めるほど労働時間と年収のギャップは一層広がることになるため、不満が解消されることはありません。

一方、多くの仕事を処理することを楽しめる人は昇格の対象になるので、長い目で見れば給与は上がります。ただ、現状で「年収」に不満がある人にとっては、将来の昇進や昇給は解決策にはなりませんよね。

大きな成果をあげる

次に、年初で定める目標管理制度 (MBO) に対して、大きな成果をあげることについてですが、こちらも、「成果と支払額の条件」が事前に定まっていないなら、大幅な年収アップは見込めません。

成果主義が浸透している外資系で目標制度に対して大きな成果をあげたとしても、対前年比で1.2倍から1.5倍程度が限界。営業職で「成果に比例するボーナス払い、且つ、支払額に天井をつけてない」なら、基準額の10倍を超えることもありますが、そのような会社は、最低限達成しなければならない目標ラインが高いので注意が必要です。

会社が1年で支払う賞与の原資は決まっているので、誰かに多く支払うには、もらえない人を増やすことでバランスを取らなければならず、実はボーナスゼロの人もたくさんいらっしゃるということです。

「薄々気づいているけど、本当のところはよく分からない」のが同僚の給与ですよね。

実は職務等級が同じでも、転職者の年収はプロパーの人より高い場合が多いです。これは、企業が外部から人を採用する際、候補者が本来持つ職務能力にプレミアの費用を支払うことで、競争環境から人材を確保しているからです。

「年収」に不満がある人は、当然、転職時に現状以上の給与水準で交渉するので、企業が求める条件と合えば、社内昇給とは比べ物にならない額の年収が増えます

まとめると、「カルチャー」と同じく「年収」に不満がある場合は、努力だけでは大きな改善は期待できないので、ご自身の市場価値を見定めるためにも、転職を検討してもよいかと思います。

成長

仕事にやりがいがない。将来のキャリアパスが描けないなど「自身の成長」のために環境を変えたいと答える人が最も多い印象です。

給与交渉が一般的ではない日本において、本音は「年収」であったとしても「成長」と伝える方が退職時の理由として言いやすい。もしくは、多少の年収アップで引き留められるのが面倒という心理が背景にあるのかもしれません。

自分を客観視する

「次の会社でどのような成長ができそう?」と聞いた答えが「カルチャー」に該当しない場合は、今の職場で実現できる手段はあります

「カルチャー」や「年収」ではなく「成長」が主たる転職理由の場合、自身の思いや期待を客観視することを強くおすすめします。

自分では、どうしても気持ちのバイアスがかかってしまうので、信頼している人に、ご自身が考えている転職のメリット・デメリットを聞いてもらってください。特にデメリットが冷静に判断できるポイントになります!

やりたい仕事とは何か

人生は一度きりなので、やりたくもない仕事に時間と体力を使うのは無駄ではないか。私も同じ意見ですが「やりたくもない仕事を今まで続けてきたのはなぜなのか」今一度問いかけてみましょう!

就職氷河期や家族の介護、驚くほど給与が高かったなど、経緯も理由も様々だとは思いますが、ご自身で仕事を「選択できる」状況だったか考えてみてください。

米ギャラップ社の調査によると、好きなことを仕事にできている人の割合は世界で15%、日本でわずか6%でした。日本の企業で働く100人中6人のみが、本当にやりたい仕事ができているという訳です!

State of the Global Workplace 2017, GALLUP

つまり、私たちの多くは「やりたい仕事につけない」という現実を先ず受け入れなければなりません。その中で、転職で求める「成長」は、これまであなたが築いてきた経験の延長線上にしか存在しません。

社会経験が短い人はピンとこないと思いますが、一つの目標を達成する過程において、同僚や取引先など、自分が把握できている何倍もの支援を周りから受けています。

これが「人間関係」というもので、関係がいいと働きやすく成果をあげやすい一方、上手くいっていないと、ストレスを抱えたり、環境に馴染めなくなります。

「次の会社でどのような成長ができそう?」と聞いているのは、「やりたい仕事につけない」という現実を受け入れているかと、「これまで築いた人間関係が活かせない」環境で自分が成長できるイメージを描けているかを確認しているのです。

「成長」のための転職は、あとから後悔しないよう、実行前に自身を客観視することを忘れてはなりません。

ワークライフバランス

長時間残業や休日出勤、リモートワークの体制が整備されていないなど「ワークライフバランス」を理由に転職を考える人も増えてきました。

通勤ラッシュを回避できるリモートワークや、定時に仕事を終えられるノー残業デーなどを上手く活用することで、仕事と生活に調和が取れるようになるのはいいですよね!

雇用条件より確認すべきこと

残業時間や休日業務、リモートワークなどの雇用条件を転職先の人事の担当者に聞いておくと良いですが、忘れてはいけないことは、上司や同僚になる方の働き方について確認することです。

勤務時間外や休日の業務連絡を拒否できる「つながらない権利」を認める法律が施行されたフランスと違って、日本では未だに多くの会社で、定時後や休日問わず業務を連絡する習慣が根付いています。

また、リモートワークが認められている会社でも、無駄に出社させたがる上司や、せっせと出社する先輩社員が多いと「使えないリモートワーク」になっていることも多いです。

新型コロナ5類の移行によって「在宅勤務廃止」や働く人の「考え方」で突然勤務条件が変わることもあるので「ワークライフバランス」を理由に転職を考えている人は、慎重に判断された方がよいかもしれません。

いつ転職すべきなのか?

いつ転職すべきなのか?

一般的には、新年度 (日系4月、外資1月) や下半期 (日系10月、外資7月) に組織を再編するので、その4か月前ぐらいから転職活動を始めるとよいと言われています。

しかし現実は「なぜ転職したいのか?」のコラムで説明したように、その理由によって「今すぐ」の人もいれば、「そもそも転職しない方がよい」人もいます。

例えば、日本企業から外資系に挑戦したい人が、新年度4カ月前の9月から活動を始めると、思い通りの仕事を得られるでしょうか。

むしろ成功確率を上げるには「普段からアンテナを張る」、「計画された職務経歴書を作り上げる」の二点が大切で、時期はそれほど関係ありません

普段からアンテナを張る

転職の感度を高めるため、転職情報を検索、エージェントサイトに相談、コネや人脈を使う。どれも正しいやり方ですが「幸せな転職」につながる正しい道を歩けていません

自分を客観視する」のコラムで説明しましたが、気持ちのバイアスが強まる転職活動においては、ご自身を冷静に俯瞰する (幽体離脱して、少し上から熱くなっている自分を見つめる) ことが何より大切です。

実は、転職情報を検索、エージェントサイトに相談、コネや人脈を使うといった、全ての行動で共通していることは「自分が次に進む道を既に決めた」上で、その具体性を高めるために情報を集めている点です。

「幸せな転職」ができる人は、自分が進むべきキャリアに対して、気持ちのバイアスをかけることなく、先ず「どこに進むべきかを判断するための情報を普段から集めている」のです!

各国における成長業界

成長している業界では、人にも、物にも企業がたくさんお金を使います。

業界地図や消費トレンド、産業レポート何でもよいので、どの業種が伸びているのかを確認しましょう。外資への転職を考えている人は、本社がある国の情報を見ることをおすすめします。

三井住友銀行 グローバル産業・業績動向
グローバル概観 - 営業利益

優秀な人材が集まっていて、研究開発や販促活動に十分な資金を使える会社で働けば、当然成功確率は上がります。一方、苦しんでいる業界を選ぶと、優秀な人でもなかなか成果がでません。また、社内の雰囲気が悪いと、ストレスを抱えるリスクが高まります。

やりたい仕事とは何か」のコラムで説明しましたが、多くの人は「やりたい仕事ではなく、これまであなたが築いてきた経験の延長線上」の仕事につきます。

つまり、あなたが築いてきた経験の延長線上につながる成長業界を選べばよいのです。

外資系企業の年収で大きく変動するのが賞与 (ボーナス) 。本社業績、国内業績、自身の成果の合計で支払額が決まるので、自身がどれだけ大きな成果を出したとしても、本社業績が悪ければ、国内で頑張った分で本社のマイナスを補填するため、もらえる額が少なくなるケースもあります。

計画性をもって職経歴書を作り上げる

転職では、自身の職務経験や実績、能力をまとめた「職務経歴書」が必要です。

氏名や住所、学歴、職歴、資格などを時系列で記入する「履歴書」は事実をまとめるだけなので、それほど手間がかかりませんが、「職務経歴書」はしっかりと準備しておかなければなりません

「何をどう書くか」などについては、ネットで検索したり、書籍で理解を深めた後、転職エージェントにテンプレートをいただくとよいでしょう。

最低限知っておくべき職務経歴書の書き方を理解できたら、いよいよ本題の「転職の成功確率を高める職務経歴書」について知識を深めていきましょう!

多くの人は「転職しよう!」と思ってから職務経歴書の作成にとりかかりますが、いざ書き始めてみると、大きく三つのタイプに分かれます。

  • スラスラ書けて内容も充実
  • スラスラ書けるが内容が掘り下げられていない
  • 書くことが思いつかない

先ず「スラスラ書けて内容も充実」している人は、「サバイブする転職思考法 実践編ブログ (近日リリース予定)」で紹介するポイントを理解すれば、どの企業においても書類審査を高確率で通過できます。

次に「スラスラ書けるが内容が掘り下げられていない」人は、ネットや書籍、転職エージェントから得た知識を使って、何とか職務経歴書の体を成してはいますが、書類審査の通過率は高くはないと思います。

このタイプで書類審査を通過できた人は「採用企業が探している人材への適合率が高い」場合が大半で、「職務経歴書の内容は薄くても、必要な情報は面接で補完する」ため合格となっています。

新卒では人事管轄で採用プロセスが進みますが、キャリア採用は「採用部門主導」となります。事業拡大の増員や組織の欠員を埋めることが目的なので、業務内容やスキルを判断できる人でないと審査できないからです。

職務経歴書の書き方はわかっているけど「書くことが思いつかない」人は多いのではないでしょうか。実は「スラスラ書けるが内容が掘り下げられていない」人もこのタイプが多いです。

十分準備できた職務経歴書を提出しているにも関わらず「書類審査がなかなか通らない」と嘆いている人は「自分を客観視」できているか今一度考えてみましょう。

同じような職歴やスキルを持った候補者が集まる募集枠に対して、あなたの職務経歴書は、書類審査を担当する採用部門の担当者が惹かれる内容を記載できているかが重要なのです。

中途採用の一人あたりの平均費用は、一般職で80万円から100万円。管理職や組織のリーダークラスなら、平均の数倍を転職エージェントやヘッドハンターに支払っています。また、書類審査不合格を出す際に、紹介先に理由を伝えなければなりませんので、あなたの職務経歴書は、採用部門の責任者や研修を受けた管理職に見られていることを意識してください(一つ前の転職エージェントのスクリーニングに関しては別コラムで紹介します)

転職の成功確率を高める職務経歴書

「書くことが思いつかない」、「掘り下げた内容が書けない」人は、この章のテーマ「いつ転職すべきなのか?」への答えとして「まだ転職すべきではありません」。

なぜなら、職務経歴書は「転職しよう!」と思ってから書くものではなく、普段から意識して「計画しながら準備する」ものだからです。

転職を考える前は、現在の職場に満足しているので「職務履歴書を準備する必要がないのでは?」と思われるかもしれませんが、それでは、転職を決意した際に、成功確率を高める職務経歴書を準備できません。

また「やりたい仕事とは何か」のコラムで説明した新天地のポジションは、一種の出会いに近いので、日ごろから準備ができていない人は、少ない機会を逃してしまいます

具体的には、下記の流れで職務経歴書の準備を始めてください。

STEP
経験の延長線上にある次の成長領域を決定
  • ハードスキル: 人事の採用、経理の事業管理、法務の契約締結、特定商品の企画、開発、販促、営業、サービスなどの専門知識や技術的なスキル
  • ソフトスキル: 効果的なコミュニケーション能力能力や組織を率いるリーダシップ、セルフブランディング力などのパーソナルスキル

これまでの業務の延長線上にある経験やスキルで、転職時に価値が高いと評価される「ハードスキル、ソフトスキル」を意識して選んでください。

STEP
職務経歴書に具体的に数値で記載できる目標を設定

例えば、マーケティング部門の方なら、○○業界のお客様の△△の課題を□□で見える化し、○○や△△など具体的なアプローチで取り組んだ結果、●●の期間で□□円の売上/利益アップに貢献できた。

人事や経理など管理部門の方なら、○○で進める社内プロセスを△△の視点で見直し、□□や■■部門の人を巻き込みながら●●の改善に成功。その結果、●●の期間で□□円のコストダウン、□□時間の削減できた。

管理職を目指している方は、○○の課題に対して、△△のアプローチでメンバーの意識改革に取り組むことで、チームとして●●の成果を達成など「ピープルマネジメントをアピールできる目標」を追加ください。たくさんのメンバーを管理する上級職の方は、管理人数でインパクトを与えられますが、そうでない場合、アピールポイントを明確にしましょう。人事権を持たない場合も同様です。

STEP
目標管理制度で実績を追いつつ、定期的に職務経歴書を更新

現職の目標管理制度を使って、上司とStep2の内容を合意して、数値で記載できること、次の会社で評価される職務経歴を意識しながら、日々の業務を進めましょう。

目標に対して成果が出たら一行ずつでよいので職務経歴書を更新。最低でも目標管理制度の評価が実施される年二回は作業を行ってくださいね!

ポイントは、皆さんが勤めている会社の目標管理制度を利用して、自身が成長したい (= 転職市場に出たときに価値が高い人材として評価される) 経験やスキルを選び、具体的に数値で職務履歴書に記載していくことです。

このように進めれば、あなたの職務経歴書は、一貫したキャリア成長に沿ったとても魅力的な内容になります。定期的に数行づつ更新するだけで、チャンスを逃すことのない「転職の成功確率を高める職務経歴書」が完成するのです。

現職の目標管理制度は、将来のあなたのキャリアを築く (強い職務経歴書を作る) ためのものと考えれば、しっかりとした制度を運営できない会社や評価が不透明な上司にストレスを感じることはありません。自身の中長期的な成功のために、会社の制度を利用する感覚で取り組むとよいでしょう。ただ、この方法を徹底しているメンバーは、周りが認める成果を上げる傾向が高いので、現職でも昇進や昇格する人が多いです。

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